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第3回 育種の歴史は、太古から。

第3回 育種の歴史は、太古から。

↑育種のイメージです

皆さま 、こんにちは。社長の伊藤です。
いつも、当社ホームページをご覧いただきありがとうございます。

私は、会社人生の大半を野菜の品種開発に情熱を注いでまいりました。
そこで、今回は植物の育種(品種改良)についてお話したいと思います。

「育種とは、遺伝的形質を利用して、利用価値の高い農作物を生み出すこと」

生物は、環境の影響を受け、時代と共に変化を繰り返しています。その過程で、環境に適応し生き残るもの、絶滅するものがあります。

一方で、育種は、自然界で起きる変異に寄り添い、有用な形質を育み新たな価値を創造してきたものです。

その歴史は、人類が狩猟・採集文化から農耕・牧畜文化に転じたときから始まっています。つまり、人類史を通じて、野生の植物は、人間にとって好ましい性質を持つ農作物に生まれ変わっているのです。

もともと、植物は、異なる種類の花粉が交雑したり、突然変異をしたりすることで、実に多種多様なキャラクターに変化していく特徴を持っています。

それで、太古より人類は、その特徴を上手に利用することで、地域の環境や嗜好に合った品種を開発してきたのです。

 

「ケールから生まれた、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、コールラビ…」

たとえば、皆さまもよくご存知のキャベツ。その起源は、ケールが始まりだと言われています。

そして、そのケールからは、キャベツだけでなく、様々な種類の野菜が誕生しています。

たとえば、ケールの花の蕾(つぼみ)が変異したタイプが、ブロッコリー。そのブロッコリーがさらに変異したタイプが、カリフラワーです。

また、ケールの茎が肥大したタイプは、コールラビに。腋芽(えきが)が肥大したタイプは、芽キャベツに。色が華やかなタイプは、園芸用の葉牡丹(ハボタン)にと、ケールから実に様々な野菜が生まれました。

ケール家系図

「食卓は、自然と人類の叡智が生みだした努力の結晶」

キャベツに限らず、他の品種でも、世界中に栽培種※ の基になった野生種※が自生しています。

たとえば、トマトの野生種は中南米のアンデス山脈を中心に多く自生しています。果実はビー玉より小さく、毒を持っているものも多いため、とても食用にすることはできません。

また、海岸で見かける浜ダイコンは、ダイコンの起源となる野生種です。でも、根部はゴボウより細く、食べられる部分は、ほとんどありません。

つまり、私たちが食卓でいただいている作物は、ほとんどすべてが太古より長い年月をかけて、先人たちが知恵を絞って育種を繰り返し、現在のものに改良されてきたのです。

そんなことを想像するだけで、先人たちの育種能力の素晴らしさを感じずにはいられません。

※栽培種(さいばいしゅ)とは、人が作物として有効利用するために改良した植物のこと。
※野生種(やせいしゅ)とは、自生地に自然のまま存在する種のこと。そのほとんどが食用には向かない。

 

「品種の開発競争。採用されて、定着できるのは、ごくわずか」

ところで、スーパーに行くと、一年中同じような野菜が売られているように感じるのではないでしょうか。でも実は、時期・産地により使われている品種は異なります。そのため、産地に選ばれるために、消費者の皆さんには見えないところで、品種開発の熾烈な戦いが日々繰り広げられています。

一方、生産者にとっても、収量※が多く、品質・揃いの良い品種を選ぶことが、農業経営を安定化させるために欠かせません。したがって、品種選びは、生産者にとって大変重要な技術となります。

毎年、種苗業界では新しい品種が何十品種も発表されますが、実際に採用され、産地に定着する品種は、ごくわずかという本当に厳しい世界なのです。

それでも、この仕事を続けてこれたのは、自分の手がけた品種が市場にデビューしたときの喜びが、何ものにも代えがたかったからにほかなりません。

※収量(しゅうりょう)とは、一定の面積あたりの土地から得られる作物の量。

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